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かわさきマイスター紹介

洋裁・介護服 栗田 佐穂子さん

誰もが喜ぶ洋服を笑顔で作り続ける

提供:川崎市
「いきいきしていることがファッション」という栗田さん。誰もが着脱しやすいユニバーサルデザインの服も、機能性だけではなくて、おしゃれであることにこだわります。経営するアソシエCHACOにお邪魔し、音楽が流れる明るい教室でお話を伺いました。
プロフィール
栗田 佐穂子(くりたさほこ)さん

先祖代々、登戸に暮らす。女子大学・家政学部に学びながら、夜間は目黒のドレスメーカー学院でも実技を学んだ。卒業後すぐに登戸ドレスメーカー学院にて1クラスを受け持ち、教える立場に。質問されながら覚えたことも多かったという。2008年11月にアソシエCHACOをオープン、レンタルボックスを提供するとともに、自身のユニバーサルデザインの服を展示・販売している。
川崎市多摩区在住。登戸ドレスメーカー学院副校長・アソシエCHACO代表。平成14年度認定かわさきマイスター。

栗田さんについて教えてください

始めるきっかけは何でしたか?

4歳の頃には、もう人形の洋服を作り始めていたそうです。教員だった両親が褒め上手で、おだてられて嬉しかったんですね。小さい頃から編み物や手芸をしていましたから小学校でも上手なほうで、褒められるからますます得意になりました。
門前の小僧という環境で、親のすることを真似るのが好きでした。戦後、着物から洋服社会になったとき、洋服はすべて母が作っていました。家族の体型や好みに合わせて作るのですから着やすく、まさにそれはユニバーサルデザインの服です。
母が晩年教壇に立つためにと、新しいデザインの服をいくつか私が作りましたが、満足している様子ではなかったです。私自身が寝込むようになった時、自分らしい装いができるだろうか。「すぐ買える・着やすく・おしゃれな服」のデザイン・製造・販売の道筋を作っておかなければと、ボランティア活動をしながら思い始めました。
父は英語の教師で、母は女学校の教師をしていました。作法や和裁が専門だったんですが、戦後の混乱期、「女性の自立と心の豊かさ」を教育方針にして、両親で登戸ドレスメーカー学院を作り、母は82歳まで教壇に立っていました。
私が学び始めた40数年前は、「無理してもきれいに見せる服」が主流でした。しかし30年くらい前、私のクラスに看護士さんが入学し、手術時患者さんが着る服の研究発表を手伝ったのがきっかけで、「着脱しやすく・人間の尊厳を守る衣服」に関心を持つようになりました。

やっていて一番面白いと感じることは何ですか?

お店に深刻な顔をして入ってきた人が、ニコニコして帰るとき、それを見送るとき、やっててよかった、と思います。
人が胸を張って生きるための手助けをしたいという心は、両親から脈々と受け継いでいます。私にとって両親は誇りであり、目指している存在です。
ユニバーサルファッションショーの後の反省会も大切にしています。   
洋服作りのプロ、ボランティア、学生、シニア、体が不自由な方、様々な立場の方の意見を聞ける貴重な機会です。真摯な気持ちで意見を伺います。
大体デザインはひとりで行います。どこかで人に会って話をし、その帰りに電車の中で思いつくことが多いんです。そのときはすぐに紙と鉛筆を出して描きます。それが楽しいんですよ!

長年、継続して技能研鑽に努めることが出来たのはなぜですか? (他の道に行こうと思わなかったですか?)

他の道に行こうと思ったことは、150%ないですね。母が戦後、食べるのもやっとという状況でも、人のために一生懸命やっていたことですから。
が、夫の支えなくしてはできなかったと思います。教師だった夫が、帰りの早いとき、休み期間中、子ども達の面倒をよく見てくれたから、仕事を続けることができました。本当に感謝しています。

苦労したことはありますか?

一見ふつうのスナップに見えるが、磁石の力で、手を離すだけでピタッととまる。
一見ふつうのスナップに見えるが、磁石の力で、手を離すだけでピタッととまる。
「ユニバーサルデザインの服に、からだの不自由な方の服というイメージが付きがち」と、白眼視され、辛い思いをしたことはあります。
私の中のイメージとしては、遠くまで続く道の先に木が1本あり、そこまでの道の石ころや余計なものは取り除いて、誰もが歩きやすい道にしていこうということなんです。だから、私なりのやり方で続けてきたつもりです。
それ以外で辛いことは、睡眠時間が足りなくなることくらいでしょうか。

自分が誇れる、自信のある卓越した技能を教えてください

ともかく緻密なことをするのが好きです。誇れるとすれば、1番は発想、2番は発想を緻密な作業で形にすることです。そのためにかかる時間はまったく苦になりません。
まずはデザイン画を描き、試作品を作ってミニマネキンに着せてみます。それから実際の大きさのものを作るのです。
若い世代は何を着ても綺麗ですが、60歳になってもウエストがくびれたかのように見間違うデザインなどを駆使して、着た人を「いきいき・無理なく・きれいに見せる」ことがファッションの楽しさだと考えています。
左写真の洋服は、着やすさをデザインに取り込んだジャケット、ずり落ちない工夫を施した膝掛け、着脱しやすいように工夫したパターンで作ったベストなど、細かい心遣いと工夫が随所に施されています。ボランティアで作ってきた時期が長いのですが、専修大学のインターンシップを受け入れたのがきっかけで、ビジネスとボランティアの棲み分けができました。企業として経済的企業として経済的に成り立たなければ、この業界は発展しないので、先駆者として成功しなければいけないという思いがあります。
また、どうすれば上手く作れるか教えるのも教育であり、それも私の仕事です。コツを書いた「いちばんわかりやすいソーイングの基礎BOOK」(成美堂出版)は喜んでいただいています。

ものづくりについて教えてください

ものづくりの魅力を教えてください

自分が心に描いたものを形にすることです。そして、それを誰かが喜んでくれることが魅力です。芸術家ではないので、鑑賞するのではなく、使ってもらって喜んでもらってこそ意味があります。
心を豊かにする魅力もあります。洋服作りの相談に来た方が、ホロッといい顔になり、心の健康を取り戻して帰って行かれます。他の人に喜んでもらえたということで、自分に自信がつき、次の難問に取り組む意欲がわきます。

かわさきマスターに認定されて良かった点を教えて下さい

2010年9月 マイスター「匠」展から
2010年9月 マイスター「匠」展から
かわさきマイスターと言うことで、安心して相談して下さるようです。信頼が基盤になり、様々な方がビジネスに不慣れな当方を支援して下さいます。それがマイスターになって一番ありがたいことです。

後継者を育成するため、何に取り組まれていらっしゃいますか?

近々の後継者は娘・息子達とそのパートナーです。みんなでアソシエCHACOの仕事を分業し始めたばかりで、役割分担が実にうまくいっています。また、このユニバーサルファッションを広く普及させるための後継者達は、登戸ドレスメーカー学院の学生や卒業生がインターンシップとして学んでいます。
この道に進むのに必要なことは、服が好きで、着る人の気持ちに関心があることです。この仕事の意義に気づいた学生達にできるだけ現場に接する機会を設け、観る・感じる・考える・行動する・そして真摯な気持ちで当事者の方々と意見交換をする。どこかのデーターを鵜呑みにして製作しても心が無ければ役立たない服になります。日々自戒しながら、育成に力を注いでいます。
子育てと同じで、その子のしたことをまわりが認めること、あまやかすということではなく、どこか褒めるということです。

これから「ものづくり」を目指す方たちへアドバイスをお願いします

どんなことでも「好きだ!」と思ったら、また、「やろう!」と思ったら、できるものです。目標を立てたら、ためらわず動くことが大事です。

最後にこれからの活動について教えてください

アソシエCHACOの店内。ユニバーサルデザインの服の他に、レンタルボックスも。
アソシエCHACOの店内。ユニバーサルデザインの服の他に、レンタルボックスも。
まずはユニバーサルファッションの種類を増やすこと。デザインや機能性をプラスし、同じデザインでも素材を変えるなどして、値段も多様化したいと思います。
次にボランティアも続けます。利潤追求だけに走ってしまったら、着やすく・おしゃれな服を必要とする人の声が聞けなくなってしまうからです。
そして、これからもイベントには積極的に作品を出していきたいと思います。
さらに、会社組織もしっかり回していかなければなりません。そこの採算はとらないといけないからです。
これらのことを実現するために、健康に注意したいと思います。
今までは、からだのことはあまり考えず、研究開発に10の力を注いでいましたが、これからは、からだ5:研究開発5の比率を目標とします。

どうもありがとうございました。
向ヶ丘遊園駅前の広場でお祭りをしたいという栗田さん。去年は登戸の古い写真を集めて写真展を開催しました。「川崎が福祉の街として栄えれば、流通も活性化する、そのとっかかりが着やすく・おしゃれな洋服だと思う」と考えていらっしゃいます。
どのお話も本当に説得力があり、感銘を受けました。ご両親の話で熱いものがこみ上げる場面もあり、笑顔の源のひとつは、心の中のご両親への尊敬の念であるように思いました。
【問合せ先】  
登戸ドレスメーカー学院 アソシエCHACO

■所在地   多摩区登戸2130-2 アトラスタワー2F
■電話    044-900-8844
■FAX         044-900-8845
■営業時間   4月~9月10:00~20:00
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