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かわさきマイスター紹介

洋裁婦人服 佐藤 榮子さん

提供:川崎市
婦人服を作る佐藤さんは、デザインから縫製までのすべての工程をこなす技能を持っています。着る人のニーズに合わせた洋服作りで喜ばれています。自宅兼仕事場であるお店には、もう30年も前にファッションショーのために作ったというドレスも飾られていますが、全く古くなく、今でも十分に着られるデザインです。
プロフィール
佐藤 榮子(さとう えいこ)さん

甲府出身。オーダーの仕事を始めて52年。嫁入り修行のひとつとして習い始めた洋裁がライフワークとなる。昭和34年から神田須田町のデザインルームに10年勤め、この間、受注したものを持ち帰って作っていた。長年、ミス川崎のユニフォームも手がけていた。
高津区在住。洋装店クチュールボンテ経営。平成13年度かわさきマイスター認定。
これは、佐藤さんの技能を紹介する動画です。クリックしてご覧ください。

佐藤さんについて教えてください

始めるきっかけは何でしたか?

出身地の甲府で嫁入り修行のひとつとして洋裁学校を卒業したのですが、もう少し勉強したくなり、ドレメ(現・杉野学園)に入りました。卒業後は恩師のところで教わりました。
結婚後、洋裁を教えたり、注文を受けたりして、本当に忙しかったですね。車を運転し、荷物を持って神田須田町のデザインルームに通っていました。そのとき、注文が入ると「仕立て屋さん、お客さんだよ」と声がかかりました。仕立て屋と呼ばれたことで、デザイナー気取りではいられないと思い知らされました。そのことで今の自分があると思っています。

やっていて一番面白いと感じることは何ですか?

オートクチュールは、お客さまに合うように素材を選び、デザインをしています。ですから、できあがったものをお客さまにおさめて、満足してもらったときにやりがいを感じます。
時間的に、あるいは経済的に厳しいことがあっても、好きだから続けていけると思っています。ファッションショーのために、ロシアに何度か行ったこともあります。とてもいい経験になりました。
声楽家の方からの注文で、舞台衣装を作ることもあります。舞台映えするように、それでいて歌いやすいようにあまり締め付けず、着心地のいいドレスを提供しています。

長年、継続して技能研鑽に努めることが出来たのはなぜですか? (他の道に行こうと思わなかったですか?)

思い起こしてみても、他の道に行こうと思ったことはないですね。苦しくて辞めたいと思ったこともありません。
いろいろな面で恵まれていたと思います。健康に恵まれていたので、徹夜して仕事をしても大丈夫でした。仕事も順調に入ってきましたし、家のことは家族が協力してくれました。
だから、寝ずに仕事をしたことは大変でしたが、ここまで続けてこられました。
そして何よりも、おしゃれが好きだったこと、身に付けてみたいと思うものを作ること、この2点が秘訣となりました。

苦労したことはありますか?

苦しくて苦しくてと思ったことはありません。忙しくて大変だったことはありますが、苦労したという感覚はないですね。
多いときは、夫、夫の母、住み込み15人のスタッフがいました。現在は私の他に5人のスタッフがいます。
ウェディングの貸衣装が流行り、おさめていたときには、月に15着のウェディングドレスを作っていたこともあります。

自分が誇れる、自信のある卓越した技能を教えてください

デザイン、パターン、裁断を、すべてひとりでこなすことです。
100%お客さまの仕事なので、細心の神経を使うことを心がけている。
1着ずつパターンをおこし、裁断し、仮縫い、本縫いと進めていきます。デザイン、裁断、仮縫いまでうまくいけば、大体納得がいく洋服に仕上がります。仮縫いの段階で、満足して頂ける仕上がりになるように、調整をします。
今はプレタポルテが氾濫している時代ですが、昭和37年頃から平成に入って間もなくまでは、オーダーが忙しい時期でした。皇室のご成婚の影響もあります。
今は、既製品が体系に合わないとか、生地に気に入ったものがないとかいった理由でオーダーする人が増えました。時代の流れでしょうか。
裁断はとてもスピーディーに進みます
裁断はとてもスピーディーに進みます
微妙な色の違いも取り揃えられた糸
微妙な色の違いも取り揃えられた糸

ものづくりについて教えてください

ものづくりの魅力を教えてください

共布で作ったくるみボタンを使うと上品な仕上がりに
共布で作ったくるみボタンを使うと上品な仕上がりに
お客様からの感謝の言葉が、ものづくりの魅力そのものです。
私自身、自分で作った洋服を着ています。やはり自分に合わせて作った洋服は着心地がいいものです。襟ぐりや袖なども好きな形にできますので、既製品にはない良さがあります。

かわさきマスターに認定されて良かった点を教えて下さい

気持ちの上で張り合いも出るし、よかったと思う。
マイスターの知名度があがればもっといいですね。

後継者を育成するため、何に取り組まれていらっしゃいますか?

後継者の育成は難しく、大きな課題です。住み込みで働く時代ではありませんし、この業界の将来を思うとき、切なくなることさえあります。プレタポルテが溢れ、オーダーメイドがこの先、どういう方向に向かうのか、不安に思います。

これから「ものづくり」を目指す方たちへアドバイスをお願いします

その筋を持っている人なら、楽しい仕事です。
洋服を好きになって、頑張ってください。

最後にこれからの活動について教えてください

今までは、ゼロから作ることに重きを置いて来ましたが、リフォームという仕事を考えるときが来たのかもしれません。
使い捨てではなく、愛着のあるものをリフォームして着られるようにする、そういったことも考えていきたいです。着る方に合うように仕上げるのは、やはり楽しいことです。

どうもありがとうございました。
取材当日にお召しになっていたジャケットは、襟の曲線がなんとも素敵でした。立体的な仕上がりになるように工夫されているとのこと。こういうこだわりを反映できるのが、オートクチュールの醍醐味なのかもしれないですね。
【問合せ先】  
クチュールボンテ

■所在地      高津区末長1071
■電話    044-866-4885
■FAX     044-866-4885
■営業時間  9:00~18:00
■休み    土・日・祝